e-経営コンサルタント通信ではリストラ・資金繰り・経費削減などの問題を経営者の視点で吉岡憲章が経営コンサルティングいたします。

<> 82<>2003/03/26(Wed) 14:34<>修羅場で人が分かる<>  *** 修羅場で人が分かる ***

 この世は自分ひとりでできるようなことは本当に少ししかないし、たいしたこと
はできない。仕事にしても、生活にしても多くの仲間や関係する人々が協力し合う
から効率的で合理的にすすめることができるのである。ただし普段はこのようなこ
とはあまり意識をしなくても別に大きな問題は発生しない。

 一方経営者は会社の経営をするにあたって、部下すなわち社員や協力会社や外部ブ
レインを使って売上げを上げたり、生産をしたり開発をしたりするのである。
 
 お客様から強烈に納期の督促を要求されたり、現場でのトラブルが発生したりす
ると、彼らに指示し対策に当たらせ問題を解決することになる。この問題の解決が
うまかったり、部下の使い方にたけていると信頼に値する人材ということで、幹部
に登用し経営の一端までも任せていくことになる。

 そして、経営者としてはこれほど認めているのだから、彼は絶対に裏切らないだ
ろうと信じ、全幅の信頼を置くことになる。これが平時であればますます良き人間
関係となっていく。

 しかし、ひとたび会社が危機になるとなかなかこうはいかないのである。
 私が経営指導をしている会社においても、経営の厳しい会社の経営者は“部下を
見る目が甘い”ということが共通している。

最悪の状態(例えば倒産)になると、今まで信じていた幹部社員が突然牙をむく
ことがある。今まで社長の言うことは全て受入れ、忠実に業務を遂行していた幹部
が社長に対して突然襲い掛かるのである。

“このような危機になったのは社長の責任だ”と大声でわめき、社内に挑発の嵐
を起すのである。もちろん経営が危機に陥ったのは一重に社長の責任である。し
かし幹部にも大きな責任があるのだが当人は絶対にそれを認めない。

“家のローンが払えない、もう自分は破産しかない。これは社長の責任だ。どう
してくれるんだ“とまるで労使交渉のような場面になる。社長としては“自分の責
任だ”と認めているからこのような時には部下といえども逆らえなくなる。
思いもかけない部下の造反に社長の心臓はひっくり返るような騒ぎになる。
 経営が行き詰まると、このように突然人の心は変わることがしばしばである。
破産などの清算型の倒産だとそのまま会社は無くなってしまうので、このようなこ
とは“社長のショック”だけで終る。

 しかし民事再生法などの再建型倒産の場合には、このようなことが起きると再建
が難しくなってくる。債権者やお得意様はやがて理解をしてくれても、会社の中に
力のある人財がいなくなって結局再建ができなくなることが多い。これが社長と部
下である幹部との現実の姿なのである。

 私は指導先でこのような再建現場を見かけると、その幹部を徹底的に叱ることに
している。危機の時には教育をしている暇などない。仲間同士の責任追求は別にや
ってもらい、再建に少しでも妨げとなることは直ぐに排除しなければならないから
である。このくらい再建現場は厳しいのである。

 平時に“ウチは人間関係が良い”とか“これだけ社員にやっているから絶対に大
丈夫だ”などというような思いはいわば“まぼろし”のようなものだと思ってほし
い。乱時にどうであるか、ということを常日頃想定することだ。

 このことは、実際に体験してみないと分からないことであるが・・・。修羅場で
本当の人間性は分かる、ということである。

               経営プロデューサー  吉岡 憲章

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