e-経営コンサルタント通信ではリストラ・資金繰り・経費削減などの問題を経営者の視点で吉岡憲章が経営コンサルティングいたします。

<> 90<>2003/03/26(Wed) 14:42<>社長の思いをどう伝えるか<> ***社長の思いをどう伝えるか***


経営者には数え切れないほどの悩みがある。売上げが伸びない、資金繰りが
厳しい、税務署が怖い……。大不況のさなかで夜も眠れない日々が続くことが
多い。

 そのような中で、経営者が言うに言えないほどの思いに駆られるのに、“俺の
この悩み、この苦労を何故社員たちは分かってくれないのだろう”という苛立
ちがある。

 “金は天から降ってくる”と思っているのではないかとしか考えられないよ
うな極楽トンボの社員たちも多い。そのような場面に直面するたびに“一体俺
のこの必死な努力や思いを彼らは少しもわかってくれない”と憤懣たる思いを
するだろう。

 しかし、ここで“わが身のこと”を考えてみよう。すなわち社長のこの“思
い”をどのようにして社員たちに伝えているのだろうか。社員は社長の鏡であ
る。ただ一人で悶々としているだけのことはないだろうか。

 部下が極楽トンボなのは、もしかしたら社長自身が経営者として極楽トンボ
なのかもしれないのである。
いくら眠れぬほど悩んでもそれを自分ひとりで悶々とするばかりで、そのまま
にしておくのであればそれまた経営的には何の役にも立たないのである。

 単に“頑張れ”とか“俺の気持ちを分かってくれ”と繰り返しても、決して
社員たちに経営者の思いは伝わらない。それどころか社員たちは“社長は一体
何を分かれと言うのか”とかえって馬鹿にされるのが関の山であろう。

 それではどうするか。
社長のやることはただひとつ。会社の現状と今後の方向付けを数字と時間を使
って表現することである。形容詞はいらない。
たとえば、“今会社は赤字決算になっている。赤字は5千万円である。しかしこ
こで経費削減を1割やって黒字体質にする。そのためにこの1年間それぞれに
具体的な目標を出すから達成してほしい。3年後には借金はゼロにする”とい
うようにである。

 今日私が経営指導をしているある中堅企業の経営改革計画発表会に出席した。
社長は多くの社員に対して会社の実情をすべて開示した。その上で皆に具体的
数字を提示して協力を要請した。そして5年後には無借金経営にするという方針
を提示した。

社長はやがて演壇から降り、皆の中で“こうなった責任はすべて社長である自
分にある。これからの5年間再度社長をやらせてほしい。必ず実現できるから
全員で協力しよう”と社長の見栄も外聞も捨てて社員の中に入っていった。
もちろんこの社長はオーナー社長である。
 
 次第に社員たちの中から拍手が沸き、社長と握手をするために、再建の誓い
をするために社長を中心とした輪ができた。
皆の目には感動の涙が光っていたのである。
その後開かれた懇親パーティの席上でも社員たちの目は輝きこれからの目標達
成をする決意にあふれていた。

 会社の方針と目標を隠すことなく開示をすることによって、経営者と社員の
間は平行線ではなくなるのである。
それこそ腹を割って話し合ってほしいと思う。必ず活路が開けてくるのである。

               経営プロデューサー  吉岡 憲章

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