e-経営コンサルタント通信ではリストラ・資金繰り・経費削減などの問題を経営者の視点で吉岡憲章が経営コンサルティングいたします。

<> 91<>2003/03/26(Wed) 14:42<>やり遂げる思い 岩をも通す<>  ***やり遂げる思い 岩をも通す***


 私が経営指導をしている会社が、ついに民事再生の認可を獲得した。つまり再建
ができたということである。こんなに嬉しいことはない。

 この会社は年商12億円、従業員70名の製造業であった。地元でも名が売れ
た地場産業で評価も高かった。
しかし、バブル崩壊後の長い不況に翻弄され徐々に経営は厳しくなっていった。

 銀行も段々と手のひらを返したように支援しなくなり、毎月の支払手形の決
済も厳しくなっていった。私は徹底的な合理化を進めたが、社長は“ウチを銀
行が潰すわけはない”と信じていた。いや信じたかったのかもしれない。
結局経営改革のために打つ手は甘かった。

 そして、ついに昨年10月手形決済日の前日の夕方に支店長が会社を訪問し“要
請されていた手形決裁のための融資はできない”と言った。“死刑宣告”である。
そのまま銀行口座は社長個人も含めて一緒に凍結された。万時休す、絶体絶命
であった。

 外出していた私の携帯電話が“やられた!どうしたらいいだろうか”とうめ
く社長の声を伝えた。私は出先から直行した。

 このままでは預金は全て凍結されているから、破産すらできない。しかしそ
んな中でも、どうやって民事再生を申立て、法的再建の道を開くか。
私の頭の中をいくつものシュミレーションが駆け回っていた。

 社長始め幹部全員を集めて“倒産とはどういうことか”、“民事再生とはどう
いうものか”、“債権者はどうするか”、“何をしなければならないのか”、民
事再生に向けての説明をし、突貫準備に入った。幹部全員徹夜の臨戦態勢である。

 弁護士の手配、民事再生申立て資料の準備、債権者への対応、社員達への対
応…等、時間が幾らあっても足りない状況であった。中でも裁判所への予納金
や弁護士報酬などすっからかんの財布の中でどうするかが大問題であった。結
局幹部たちから一部を借りたり、分割払いで凌ぐことにしたのである。

 翌朝には弁護士と申立て準備に入ることができた。工場には“民事再生申立
てのお知らせとお詫び”の書面を貼ることができた。まるで神業のような一晩
であったと思う。

 無事に、裁判所より民事再生の開始決定を受け、再生計画案の立案を進めた、
最も大事なことは、債務を弁済できるだけの事業の継続ができるかどうかとい
うことである。この裏づけがなければ裁判所はただちに職権上の破産命令を下
す。

 そのためには、合理化した経営体質のもとで、如何に利益の取れる受注を確
保するか、原価管理のシビアさに加え、生産に当たる社員達のモラルが大事であ
る。

 このような倒産の修羅場になっても、幸いにも社長が社員達の信頼を集めて
いた。社長も債権者に真っ向から向かい合い、一切の言い訳も逃げもしなかっ
た。これが債権者からも顧客からも評価をされたのである。

 再生認可を受けるまでには、会社の登記簿謄本には再生事件を起している旨
の記載が載る。前科者扱いである。従ってこの間の新規受注は難しい。

社長は、何とか再生を果たしてこの記載を削除し、新しい受注を増やし頑張
ってくれている社員や債権者に報いたい。
私と会うたびに、電話で打ち合わせをするたびにこの思いをいつも語っていた。

 そして不渡り発生から8ヵ月後、再生計画案に対して93%もの高い同意を
債権者から獲得したのである。民事再生法の場合の同意率は50%以上と定め
られている。

 社長の会社再建への思い、社員への思い、債権者への思いがこのような形と
なって実現することができたのである。最悪の中でこれまでの努力が報われ喜
びを勝ち取ったのである。これからは計画の完全実行に向けて全員で頑張るこ
とにより、過去のしがらみも全て払拭して真の再建が期待できる。

 中小企業の70%は破綻に向かっているのが現実である。実際に倒産をする
前に、経営改革の決意をすればこれほどまでの修羅場を向かえずに再建できる
のである。
本当に“どうすれば最悪の状態にならないで済むか”を悩んでいる経営者はぜ
ひご連絡いただきたい。今ならまだ間に合うのだから。
甘い自己判断と自己流の経営は大きなキズに繋がる。

               経営プロデューサー  吉岡 憲章

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