e-経営コンサルタント通信ではリストラ・資金繰り・経費削減などの問題を経営者の視点で吉岡憲章が経営コンサルティングいたします。

<> 45<>2003/03/26(Wed) 12:38<>売上目標の無理な設定は事故のもと<>***売上目標の無理な設定は事故のもと***


私はこれまでに経営改革をするに当って、その戦略を立案する際に、“売上計画は大
きく伸ばしてはいけません、基本的にはこれまでと同じ程度に設定すると良い”、と
言う主旨の事を何度も述べて来ました。

つまり、経営者の立場からしますと、経営の危機を脱出するために先ず考える事は、
どうやって売上を上げるかと言う事ではないかと思います。
売上を上げる事を考え実行する事自体は、大変結構なのですが相当具体的な煮ツメを
して掛からないと失敗します。

なぜなら、厳しい経営にある中小企業にとって、目先で今以上に売上を伸ばす事は、
至難に近い事なのです。
社長は金策が忙しくて、お客様廻りより銀行めぐりでしょう。販売戦略の検討より
借入の為の資料作りに忙しいでしょう。

営業も新規顧客開拓よりも、売掛金の回収で大忙しでしょう。
こんな状況では売上を伸ばす事よりも、現在より如何に売上減少を防ぐかが精一杯な
のではないでしょうか。

私の体験した例を少しご説明します。
この会社の売上目標設定の仕方が大変に変わっていました。変わっていた、と言うよ
りも経営としては??と言う事になるでしょうが。

社長の方針は“自分の会社は少なくとも年30%以上売上を伸ばす”と言う事で、こ
の位成長しなければ、会社としての意味が無いとの信念を彼は持っていました。
しかし、実態としてはもう3年以上も横ばい状況が続いているのに…、です。

このような飛躍の目標を持ち、自らを励まし頑張る、と言う事は大変に結構な事です。
この計画を社内の意欲目標としている内は良いのですが、これを事業計画の目標とし
て世の中に公表してしまう訳です。

彼は“人間は弱いもので、100と言ったら70〜80しか出来ないのだ。だから
1.3倍くらいの目標にするのだ”と言う、分かったような分からない理論を展開し
誰に反対されようが断固発表してしまいます。

社員は納得していませんので、日常の行動は今までと変わりません。
一方外部に公表してますから、社長はあせって皆の尻を叩きますが、改革は実質的に
していないのですから、効果は出ません。せいぜい無理をした押込み販売をするしか
有りません。

それで、その会社は決算月には通常月の3倍も売上が上がってしまいます。
それでも、目標未達の為に下方修正の発表をせざるを得なくなり、投資家からの
信用も無くして行きます。
無理をした売上ですから、売掛金の回収も思うように行かなくなり、やがて資金が
回らなくなり、経営破綻に繋がっていった、と言う最悪の結末でした。

皆さんはこれを読んで“オレは違う”と思うでしょうが、本当でしょうか?
これほど極端ではないかも知れませんが、殆どの経営者はこのような畑は持ってい
るのではないでしょうか。

売上を決定する時には、頭のスミにこの事を置いて下さい。
迂闊に、気持ちだけで売上増加の計画を決めないように、心がけて下さい。


                 経営プロデューサー  吉岡憲章

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