e-経営コンサルタント通信ではリストラ・資金繰り・経費削減などの問題を経営者の視点で吉岡憲章が経営コンサルティングいたします。

<> 50<>2003/03/26(Wed) 12:42<>何の為に株式公開をするか<>***何の為に株式公開をするか***

中小企業の多くの経営者と話をしていると、如何に株式の公開に関心を持っているか
がわかります。
また、ベンチャーとして起業すると株式を公開する事が、目標として当然と言う様な
起業、経営の定石と考えている様です。

何故、そんなに株式公開を望むのでしょうか
1)この事業をさらに大きく伸ばす為に市場から金を集めたい。
2)返さないで良い資金を集め経営体質を良くしたい。
3)創業者利益を得たい。
4)世の中から評価される会社にしたい。
5)社長としてのステイタス・シンボルを得たい
6)ETC

私は、公開に挑戦し残念ながら出来なかった会社も、公開はしたけれどもそのメリッ
トを享受出来ずに破綻した会社も、更にはベンチャーとして起業し公開を夢見ている
会社も、そして勿論下請けで公開なんてとてもとても…という会社を全て我が事とし
て体験しています。

2番目の、“公開はしたけれどメリットを享受出来ず破綻した会社”の実例が最も株式
公開の意義を考える上で参考になると思います。
この会社は特に技術開発を重点とした、典型的なベンチャーでした。

約3年に亘り株式公開に向けて全力で努力し、主幹事証券会社の指導も良く、見事に
店頭公開を実現しました。
勿論、創業メンバーはこれにより多くの利益を得ましたし、それこそ会社は市場から
多額の資金を調達する事が出来、将来の夢を現実的なものとして考えるようになれま
した。

株主に対する責任からも、明るい経営計画や徹底した管理体制の充実なども図られ、
まぎれもない“公器”としてスタートしました。
社長は公開企業になったとの認識を深める為にも、主幹事の指導により、あちらこち
らで、“公開成功体験者”としての講演をして回りましたし、社長専用車の後に乗る
事も助言されます。
毎日何度も我社の株価を確認し、株価に徹底的に意識を持つ事も言われます。

順調にスタートした筈でしたが、時悪くバブルの崩壊の影響が現れてきました。
各企業は景気の急降下に対応する為に、新しい設備投資等を徹底的に控え始めました。
それは今の半導体不況下の設備投資の低下どころではありません。

しかし、一度手にしたステイタスとプライドは、この時に“リストラをしよう”等の
方向転換を考える余地すらも与えられませんでいた。
如何にして売上を伸ばし切り抜けるかの発想のみの戦略の一本槍でした。

この方針は見事に失敗し、その後3期赤字決算を繰返し累損状態になるほど低迷をし
てしまいました。
こうなると、もう新たに市場から資金を調達する事など不可能です。

やがて、バブルの影響も少し癒され業績も大分回復してきました。
さあ、今こそ公開会社のメリットを生かして、株式の時価発行をして市場から資金の
調達が出来る時が来ました。
主幹事証券会社とも相談し、いよいよ具体的な増資準備に入りました。

それに合わせて、それまで控えていた設備や開発投資も具体的に実行です。
ところが、やがて証券業界はマスコミから損失補填を始めとする数々の“不祥事”に
対して攻撃を受けると共に、市場の株価も大きく低迷を始めました。

結局、このエクイティー・ファイナンスは市場が上向くまでとの理由で何度も延期を
せざるを得なくなりました。
一方、計画した投資は進むし、公開会社ならではの会計監査費用や総会費用他公開企
業としての体裁を保つ為の大きな出費は続きます。

やがて、資金が枯渇し会社は破綻の道をたどって行きました。
この会社は、公開をしていなければ“ベンチャーの雄”として、これほど大きくは成
長は出来ませんでしょうが、この様な最悪な結果にはならなかったでしょう。

結局、公開をする事により、当然狙いとしたメリットを得る事が出来ず、逆に必要と
しないコストばかりがかかり、やがて破綻をした、という実例です。
経営者の皆さんは、安易に“公開する”など、とは口にする前に、株式を公開する、
という事は、現実にどのような事なのかを充分勉強してください。

                  経営プロデューサー  吉岡憲章

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