e-経営コンサルタント通信ではリストラ・資金繰り・経費削減などの問題を経営者の視点で吉岡憲章が経営コンサルティングいたします。

<> 55<>2003/03/26(Wed) 12:47<>銀行が手を引く時<> ***銀行が手を引く時***

前号で、銀行は“わが身大事”という、当然といえば当然の事を書いた。
じゃ、具体的にはどうやってわが身を大事にするか、と言う事である。

それは、如何にして“わが身”に傷をつけないか、言い換えればどうやっても、銀行
がソンをしない仕組つくりに徹している事を考えてみれば明確にわかる。
たとえば、同じ支店の口座に振り込むにも“手数料”を取られちまう。
何だ、目の前に居るくせに!と思っちゃう事が何度も有るだろう。

その“わが身を大事“にする事のうちに“回収を上手くやる”という彼らにとっては、
とっても重要なガードの為の仕事である。
すなわち、貸した金を一銭のソンもしないで取り返すか、と言う事で当り前と言っち
ゃ当り前な事・な・の・だ・が。

その為に、銀行の担当さんは、耳をダンボの様に大きくし、目を皿の様にして、貸付
先を睨んでいるわけである。
時には、やぶにらみをしているスットン行員もいるが、こういう愛すべき人材は決し
て出世は出来ないのだ。

私の体験(勿論巻き上げられる方だが)から考えると、銀行さんは“これっぽっちの
疑惑”をあれこれ投げては相手がどう出るかを見ながら、やがては将棋の様に“王手”
ハイ“詰み、強制回収!”という具合にする訳である。
以下私の体験談を幾つか並べてみたい。

銀行のウラ用語に“ホシ1つ、ホシ2つ”という暗号がある。(銀行によってホシが
ほかの表現になっているが)
*、**がホシと言う事で、貸付先の名前のそばに*マークがつくと、いわゆるブラ
ック情報が1件あり要注意、**となると銀行としてはもう退却である。
たとえば、街金融に手形が流れたとキャッチすると、もう*である。

今まで貸していたのに、突然お宅の代表の個人借入が多い。従ってこれも会社の貸し
付け枠の中に、ゴッチャに入れて“ハイ、枠がなくなりました”だよ。
上場会社にまでこんな事が及んでくる訳である。
あれだけ“借りてくれ、借りてケレ”と追いまわしていたのは誰だっけ!?

“レシオ(各銀行間の融資比率を決めておく事)は良かったころの事、今は違うのよ、
だめよー”と支店長様いわく。約束ってそんなに一方的に破るものなの?

回収するとなると徹底的に追い掛け回して“しょうがない、返す”というまでまるでス
トーカーの様になる。
あの関西系の逃げ足の速いことで有名な銀行は、休みの日に私の自宅まで押しかけて来
た。
ピンポーンとチャイムが鳴り、応対に出た女房が、血相変えて“大変だ、ヤクザが
来た!”と戻ってきた。だけど、その某銀行の支店長と融資係だったんだ。

とにかく、“突っ込まれる隙を作るな、見せるなが我等借入側が“わが身を大事“に
するポイントですな。

ここ毎年9月の声を聞くと、3年前の私自身を襲った、銀行の強制回収とそれによる経
営破綻に対し、身をよじるような憤りと後悔と懺悔が入り混じったような複雑な思いが
押し寄せてくる。

突然の強制回収に対して、未だに“銀行は私との約束を破り、有無を言わさずにわれら
を破綻の道に追込んだ“と言う思いがこびり付いている。
該当銀行は、その後マスコミで“強制回収とはそういうもんだ”との談話を発表してい
る。 何て言うこった!

その1年位前、“銀行ビッグバン”が平成10年4月から実施される、とマスコミも
銀行も経済界も大騒ぎをしていた頃の事である。
別の国策銀行の幹部が私の所にきて“吉岡さん ビッグバンに銀行はどのように対処し
て良いのかよく分からないけど、しかるべき所から、貸出しを出来るだけ抑える様に、
と指導されています。その時に困らないように経営体質を改善しておいた方が良いです
よ”とアドバイス。

それに前後して、主要取引行5行全てがまるで一致協力しているかのように、様々な形
で、回収を始めて行った。
ある銀行は、一寸した噂を理由にしたり、賞与資金を気を持たせた結果出さなかったり、
メインが貸してないからとか、まるで貸渋りどころで無く、“貸し剥がし”であった。

                   経営プロデューサー  吉岡 憲章

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