わが国の開業は、中小企業白書によると、直近6年間の年平均約1万社、一方廃業はその倍の約2万社程度を推移して
います。また、倒産をした企業は帝国データバンク資料では2018年で約8千件と言われています。
ところが、会社を休廃業または解散をする企業は、2,018年では年間4万7千社近くにも及びます。何と倒産の7倍以上に
およびます。
さらに衝撃的なことは、この理由の大半は事業承継ができないため、ということです。倒産企業と併せると、何と1年で
5万5千社もの生命の灯が消えるのです。
全国245万人の中小企業の社長のうち、半分にあたる127万人も後継者が決まっていないため、事業を引き継げず廃業
に追い込まれる企業が増えている、と日経新聞は伝えています。
■少子高齢化に加えて、会社の将来に夢を託せない
では、なぜこのように事業承継問題で会社の休廃業や解散が急激に増加しているのでしょうか?
その答えは次の2つです。
@経営者が高齢化していること。
中小企業の経営者の年齢は右肩上がりに高くなっています。
中小企業の社長の平均年齢は71歳。わが国の男性の健康寿命は72歳、健康寿命の余命は平均あと1年です。
A後継ぎ候補がいないこと。
以前はほぼ社長の“息子が後継ぎ”と決まっていたのですが、今では少子化の影響や人生の多様性もありなかなか
思うようにいきません。このように、中小企業の事業承継の基盤が厳しくなっているところに、実はもっと重要な課題が
横たわっているのです。
廃業する理由は、「事業に将来性がない」27.9%、子供に継ぐ意思がない・子供がいない・適当な後継者が見つからない
という後継者側の問題が28.6%である。
さらに、38%を占める「自分の代でやめようと思っていた」経営者も、自社の事業の将来性に期待できなかったからでしょう。
このように、事業の将来性が見いだせない、つまり、自社の今後の成長と収益力に最大の課題があることが分かります。
■中小企業の事業承継に対するM&A仲介専門業者の問題点
いま、企業のM&Aの仲介事業は、仲介専門業者にとってぼろ儲けができる宝箱のような存在と言えます。
丁度不動産売買業者と同じようにM&A仲介専門業者を考えると分かりやすいと思います。仲介業者は、企業を土地と同じよう
に右から左へと転がして手数料を得るということです。
しかも、その手数料は土地売買の何倍も取れます。私どもから見ると、ボッタクリビジネスのように思えます。
従って、売買金額の大きいM&A案件に力を入れますから、残念ながら中小企業のケースはどうしても力が入りません。
規模の大小にかかわらず手間は同じくらいかかりますから、中小企業のM&A案件は本気になりません。
でも、一応受注はします。なぜなら着手金は何もしなくても入りますし、返却の必要はありませんから。そこで、何もアクション
を起こさないまま、やがて「一生懸命やりましたが、良い売却先が見つかりませんでした」と断られることになります。
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